結婚式に参列する母親が着物を着る前に…準備や当日に注意したいポイント
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結婚式に参列する母親の服装として、最も選ばれている「黒留袖」。最近では結婚式の多様化に伴いドレスコードも緩やかになり「色留袖」を選ぶ母親も増加しています。
しかし、ドレスコードが普段から着物を着慣れている方が少なくなってきた昨今、準備不足や打ち合わせ不足で結婚式当日の後悔やトラブルが多いケースもしばしば起きてしまうよう。どのような点に注意して準備を進めればよいかご紹介します。
「両家の親の服装の格」は具体的にどうやって合わせる?
結婚式の両家の親の衣裳合わせで必ずいわれる「両家の親の服装の格を合わせる」マナーですが、話し合ったつもりでもお互いの認識不足で、会場の格式やTPOなどの確認違いで当日の両家の親の服装がちぐはぐになってしまうケースも多いようです。
会場が決まったら、まずは両家へ直接ふたりから「どんな雰囲気の式場か」「どんな式にしたいのか」といった詳細を具体的に伝え、その際に両親が持っている衣裳の有無や、結婚式に着用を考えている和・洋装の希望についても確認しましょう。
季節感や礼装マナーなど、ゲストの立場の服装は分かっていても親の立場になると分からない方も多いため、会場の衣裳担当に相談し、その内容を両家へ伝えることも大切です。
両家の親の衣裳は新郎新婦が中心となり、仲介してバランスをとるケースがほとんどですが、親側の方からも、心配な点や不安な点はどんどん新郎新婦に質問し、相手の親の服装についても確認をとったうえで、結婚式までに衣裳への不安をなくておきましょう。
両家の集合写真や家族写真のフォト映えも意識して衣裳を選ぶには?
レンタル衣装の注意点として、両家の親の衣裳がまるで同じデザインになってしまうケースや、衣裳の格だけでなく色合いがちぐはぐで集合写真にまとまりがなくなってしまったというケースです。
両家で一緒に衣裳合わせができる日を設定する、または結婚式会場提携の同一の衣裳サロンでレンタルすると、担当者が両家の親が何を着用するかすぐ確認がとれ、フォト映えや格式のつり合いバランスが取りやすくなります。
衣装合わせの日取りは顔合わせや会場見学など、両家で揃う日に下見や試着の予約を入れられるよう工夫すると良いでしょう。
息子娘のハレの日に気に入った衣裳を確実にミスなく選ぶには?
新郎新婦の衣装選びと同様、父親母親の衣裳選びも3ヵ月前には決まっていると安心です。できれば、新郎新婦の衣装選びと父親母親の衣装選びは同一の日にする、または両家衣装選びを同一の同じ店にすると、両家の格も合わせやすく、衣裳選びが遅くなり気に入ったものがレンタルできなかった…という手配遅れによる後悔が少なくなります。
遠方が実家の場合や既に親元に手持ちのものがある場合には、着用衣裳を画像で共有する、手持ちのアイテムを必ず事前に試着し、小合わせる小物に不備がないかまでチェックするなど確認と共有を万全に。
レンタルで試着が難しい場合は、必ずサイズを採寸する、通販レンタルで試着てきるサイトを選ぶなど、できるだけ事前確認を万全にしましょう。
着付けとヘアメイクの希望は画像を用意。帰り仕度の確認も万全に
父親・母親は新郎新婦と共にゲストを迎えるホスト側であるため、誰よりも先に支度を整える必要があります。特に自前やレンタル衣裳を持参する場合は小物の忘れ物や、チェック不足で使えると思っていた小物が古くて使えないアクシデントもよくあるようです。何が必要か持ち物をしっかり事前確認しましょう。
ヘアメイクや着付けに関しては、希望のスタイルやコーディネートがある場合は写真や画像を事前に準備して持っていくのがおすすめです。会場の美容室や着付け室を利用の場合は、おふたりを通じて担当プランナーから確認をしてもらいましょう。
また、スタッフに披露宴後は着替えて帰るのか、着用したまま帰るのかを事前に伝えておくと安心です。
結婚式で新郎新婦の母親の服装は黒留袖が定番。選び方や着こなしマナー
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黒留袖は、既婚女性が着用するもっとも格式が高いとされる「第一礼装」であり、結婚式や披露宴で花嫁や花婿のお母様が着る衣裳として定着しています。
黒留袖は地模様のない縮緬(ちりめん)を生地に使い、裾部分のみに絵柄が入っているのが特徴。背中と両胸、両袖に計5つの家紋が入る決まりもあります。
日常生活ではなじみのない家紋ですが、誰でも使える「通紋」という便利な紋があり、自分の家紋がわからない場合でも心配ありません。また、レンタルも通紋が主流になっており、レンタルの黒留袖は、どなたでも安心して利用できます。
チャペルウェディングでも着物(黒留袖)は着用OK
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現代はさまざまな挙式スタイルがありますが、どの挙式スタイルでも正礼装がマナー。
「教会(チャペル)式に着物でもいいの?」と不安をもつ方もいます。既婚女性の第一礼装である黒留袖は神前式はもちろんのこと、キリスト教式や人前式でも着用できます。
結婚式で黒留袖を着用するときの注意ポイント
結婚式や披露宴での装いは、両家のバランスと格を合わせることが大切であるため、新郎新婦の母親同士で衣裳の格をそろえられるよう、事前に打ち合わせておくと安心です。主役である新郎新婦がどんな衣裳を着てほしいのか、希望もしっかり聞いておきましょう。
また、黒留袖でも柄や模様に差があるため、もし両家の母親が両方とも黒留袖を着用する場合は、豪華さや華やかさで差がでないよう、新郎新婦が仲介し確認とバランスをとる配慮を。
黒留袖の着こなしや小物選びのポイント
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黒留袖の着こなしや小物選びには、第一礼装ならではの合わせる帯や小物にも決まりごとがあり、幾つかの注意点やマナーがあります。母親に相応しい衣裳を選べるよう、ポイントを確認しましょう。
黒留袖の絵柄選びのポイント
結婚式の主役は新郎新婦です。お母様という立場で黒留袖を着る場合は、やや落ち着いた装いを心がけましょう。
黒留袖は絵柄が入る位置や範囲が重要なポイントです。裾模様の入っている位置が低く、範囲も小さいものが年配者向けだとされています。年齢相応の上品さを演出したい方は、裾にすっきりとした絵柄が入っているものを選ぶとよいでしょう。
絵柄はおめでたいモチーフをまとうことでお祝いする親心を伝えるため、格調の高いものをチョイスしてください。鶴や亀、松竹梅、鳳凰など吉祥模様は、結婚式の母親が着るにふさわしい絵柄です。
帯選びのポイント。格調高い絵柄の「袋帯」を
黒留袖には「袋帯」を合わせます。袋帯とは、表地と裏地を別々に織り、その両端をかがって袋状に仕立てた帯のこと。表地には美しい模様が入りますが、裏地は無地か地紋のみでシンプルです。それを二重太鼓で結ぶのが、黒留袖を着こなすうえでのルールです。
袋帯の絵柄は、格調高いものを選びましょう。おめでたいとされる松竹梅や桐、吉祥文様の鶴亀や鳳凰、重厚で典雅な雰囲気をもった有職文様や正倉院文様などもおすすめです。
帯揚げや帯締めは「白色」で
帯の上からチラリと見える「帯揚げ」や帯の上から結ぶ「帯締め」など、小物類のカラーは「白」でそろえます。白地に金糸や銀糸が入っているものは華やかで、結婚式や披露宴にふさわしい装いになるでしょう。
そのほか、足袋や半衿なども白で統一してください。黒留袖は第一礼装なので、金と銀色以外の色物の小物はいっさい使えません。色のついた刺繍が小さく入っているものもNGです。
草履とバッグも「礼装用」を合わせる
草履は、かかとが4~5cm程度ある「礼装用草履」を合わせます。素材は白地に金や銀などを織り込んだ布地のものや、エナメルなどが一般的。バッグも礼装用を選び、素材やデザインを草履と合わせるとバランスのとれたおしゃれなコーディネートができます。
扇(末広)の選び方と着用ポイント
黒留袖を儀式で着るときは、「末広」または「祝儀扇」とも呼ばれる小ぶりの「扇」も必要です。黒塗りの骨に金か銀の地紙が一般的で、白地に金箔押しや銀箔押しのものもあります。
末広とは儀式用の小物のことで、広げたり、あおいだりせず、自身から見て左側の帯と帯揚げの間に挟むように挿します。地紙の色が見える向きにし、帯から出る部分が2~3cm程度になるよう挿すのがポイントです。
ゲストの出迎えや見送り、集合写真の撮影時には手にもちます。持ち方は、右手で根元にある要(開く際に支点になる部分)のあたりを上からもち、左手は閉じた先端を下から支えるイメージで添え、末広が横向きになるようにします。末広が身体に密着しないよう、やや離して帯の前あたりでもつのがポイントです。
黒留袖を着る際のアクセサリーのマナー
黒留袖は特別なシーンで着る礼服であるため、身に着けるアクセサリー選びも普段着や洋装の場合とは異なります。
結婚指輪以外のリングは避ける
結婚指輪や婚約指輪は両方つけられ、重ねづけも問題ありません。
とはいえ、婚約指輪は華やかなデザインも多いので注意が必要です。とくに立て爪タイプは、着物に引っ掛かりやすいため避けた方が無難です。宝石のついていないシンプルでフラットなタイプか、宝石がリングに埋め込まれたデザインなら安心です。
それ以外のおしゃれ用のファッションリングはマナー違反になるので外していくのがマナーです。
指輪以外のアクセサリーは外す
黒留袖の着用時にはイヤリングやピアス、ネックレス、ブレスレットなど、アクセサリー類はつけない方が無難です。格式の高い黒留袖は、それだけで豪華な装いなので、装飾品は必要ありません。
腕時計も外す
黒留袖に似合わないだけでなく、つけているだけで時間を気にしているように見えてしまうため、結婚式で腕時計は外すのが一般的なマナーです。
香水はほのかに香るものを
香水のつけ方や匂いのきつさにも注意が必要です。着物は高価になるほど繊細な生地のため、香りが着物に付着して取れなくなったり、香水が染みて生地を変色させてしまう可能性があります。また、会食のテーブルににおいが漂ってしまうと、せっかくの料理が台なしに。ほのかに香る程度で控えめに楽しみましょう。
結婚式に参列する母親が色留袖を選ぶ場合は?色留袖の選び方
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色留袖とは、既婚女性や振袖を卒業した未婚女性の正礼装(第一礼装)・準礼装用の着物で、上半身は無地で、裾まわりにのみに模様が入るのが特徴です。
模様は縫い目で途切れない「絵羽模様」が描かれます。生地は、表面に細かいシボのある「ちりめん」の他、地模様が織り出されたものを用いることもあります。
また、着用シーンや目的などにより、入る紋の数が異なるのも特徴です。具体的には、五つ紋(正礼装[第一礼装])、三つ紋(準礼装)、一つ紋(略礼装)、無紋にする場合があり、五つ紋を入れると黒留袖と同格となります。
結婚式で色留袖を着る際は、そのときの立場によって使い分けが必要です。色留袖は紋の数によって格が変わるため、母親が着用するには必ず5つ紋であること、結婚式の状況によっては適切な場合とそうでない場合があります。
新郎新婦の母親の立場で色留袖を着用しても良い?
新郎新婦の母親として結婚式で着用する際は、本来はもっとも格の高い五つ紋を付けた黒留袖を着用するのがマナーです。
色留袖でも五つ紋の比翼仕立てであれば黒留袖と同格になりますが、一般的な結婚式であれば、新郎新婦に最も近い親族であり、ゲストをお迎えする立場である母親であれば、色留袖ではなく黒留袖を選ぶほうがよいでしょう。
色留袖を着用できる結婚式はレストランなどドレスコードの規定がゆるいカジュアルな結婚式の場合や、家族のみ、親族のみといった少人数で身内のみの結婚式といった状況に限ります。
ただ、母親としてゲストの中では最上級の格である服装が求められること、新郎新婦と同格の服装が基本であるため、色留袖を着用したい場合はまず新郎新婦と相談のうえ、もう一方の家や他の親族と服装の格を揃える必要があるでしょう。
母親が色留袖を着用する場合の注意点
厳粛な場で花嫁を引き立てるためにも、柄は格調高く落ちついた模様を。
結婚式では両家の両親がゲストの前に並ぶことが多いため、結婚式や披露宴では両家親族の装いの格を揃えることが大切です。
片方が色留袖で片方が黒留袖といった衣装の差が出ないよう配慮が必要です。新郎新婦ともに事前に衣装を確認し、装いの格を統一するようにしましょう。
結婚式の色留袖の帯の選び方
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結婚式で着る色留袖に合わせる帯は、喜びが重なるという意味から袋帯を二重太鼓で締めます。色留袖の格調に合わせて、金糸や銀糸が織り交ざった気品ある柄がふさわしいでしょう。
結婚式にふさわしい色留袖の小物の選び方
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結婚式で色留袖を着用する際は、小物の合わせ方にも気を配りましょう。基本的には、帯揚げや帯締めの色は白の礼装用または白地に金銀が入っているものを選びます。
まとめ
息子、娘の結婚式で母親が着物を着る場合は事前準備を万全に
結婚式の母親の服装として最も選ばれている黒留袖ですが、普段から着物を着慣れていない方も多いはず。そのため、衣装合わせや小物と持ち物のチェック・ヘアメイクのイメージ作りと画像集めなど事前準備を万全にして、当日に望みましょう。
何を着ていくかは本人の希望だけでなく、新郎新婦からの希望や、相手の家の母親の意向なども確認して選ぶ必要があるので、できれば考えを共有できる場や、衣装合わせが同一日、同一店で行えるようにする工夫もあると安心です。