新郎衣装で最も人気のあるタキシード。タキシードとは?
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タキシードとは、基本的には夜間、宴席で着用される男性用の礼服の一つです。女性のイブニングドレスやカクテルドレスに対応する服装です。
同じく夜間用の正礼服である燕尾服に対して略式の礼装とされていますが、現代では燕尾服の使用が減ったため、タキシードが実質的な正礼装の様に使われており、日本では正礼装として扱われるケースがほとんどです。
イギリスではディナー・ジャケット(会食服)、その他の欧州諸国ではスモーキング(smoking、 喫煙服)とも呼ばれています。
結婚式衣裳としてのタキシード
本来は夜間のみ着用される準礼装のひとつですが、日本では昼夜を問わず着られる正礼装としての扱いが定着しています。
近年の日本の婚礼シーンにおいてはフロックコートとタキシードをかけ合わせたようなデザインのものも、総称して「タキシード」と呼ぶ傾向です。
色は黒や白、グレーが基本のカラーですが、光沢のある素材で華やかさをプラスしたものなど、色柄ともに多様化しており、ファッション性に富んでいます。
柄はチェック、カモフラプリント、花柄まで出ており、新郎のキャラクターも表現できるほどデザインは多様化を遂げています。
着用時にジャケットの着丈の長さで、ショート丈はフォーマルな場、すなわち結婚式では失礼な印象を持たれますので気を付けてください。短めが人気とはいえ、ビジネススーツとは異なる装いが正式です。隣を歩く新婦のドレスとのバランスをしっかり考慮して選びましょう。
結婚式衣裳でタキシードを選ぶ新郎はなんと90.3%
挙式、披露宴・ウエディングパーティでの新郎の衣裳について、複数回答で何を選んだか調査したところ、2021年度のゼクシィの調査ではなんと90%の新郎がタキシードを選んだといった結果に。
モーニングコートは日本の結婚式では「父親が着用するもの」といった考えが浸透しているため、新郎は避ける傾向ですが、現在の日本の結婚式では、挙式やパーティを通して、またはいずれかのタイミングで1回はタキシードを選択する新郎がほとんどです。
データ出展:ゼクシィ 結婚トレンド調査2021調べ
【新郎の衣裳の種類(複数回答)】
タキシード:90.3%
紋付袴:21.3%
フロックコート:1.6%
テールコート:1.3%
スーツとの違いは洋服のランク
結婚式などフォーマルな場面で、もてなす側に求められるのは格式の高さです。スーツはランクが高い正礼装のモーニングコートの裾を短くしたもので、「略礼装」とみなされており、結婚式ではゲストが着用するのに適しています。一般的な結婚式で新郎は着用しません。
新郎のタキシードは他の男性ゲストの服装と差をつけて選ぶ
昨今では新郎だけでなく、結婚式のようなフォーマルなパーティで男性ゲストがブラックスーツ以外にタキシードをお呼ばれの服装として選択する人も増加しています。
そのため、結婚式の主役として、他の男性ゲストと比べひとめでわかるような生地やデザインのタキシードを選ぶ必要があります。
また、花嫁衣裳は結婚式ではもっとも華やかで格の高い女性衣裳として造られているため、新郎のタキシードも花嫁と並んだバランスを考えて見劣りしないものを選ぶ必要があるでしょう。
タキシードの基本的なコーディネート構成と着こなし
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タキシードは主に宴席、パーティーなどでの着用が主なため、個性を主張するためのアレンジが他の礼服に比べて許容されています。まずは、基本的な組み合わせや合わせる小物を確認し、基本のタキシードのコーディネートを押さえておきましょう。
ジャケット
色は黒または濃紺で、生地はカシミア、ドスキン、バラシャなどがよく使われます。
タキシードのジャケットの衿は、シングルブレストまたはダブルブレストで、先の尖ったピークドラペルか、一枚衿のショールカラーが基本です。シピークドラペルでは下襟を、ショールカラーでは襟全体に拝絹(はいけん・光沢のあるシルクの生地)をつけたものが正式(日中の使用を考慮してあえて付けないものもある)です。現代ではノッチドラペルの仕様のものも存在します。
ボタンは上着と同じ生地で包んだ包みボタンでひとつボタンが正式で、裾のスリット(ベント)はないのが一般的です。
ポケットのフラップは基本的にありませんが、中に入れられるものであればOK。胸元にポケットチーフを差すと、ドレッシーな印象をさらに高められます。
近年では、ファンシータキシード・スーツと呼ばれる避暑地などで着られる白、変わり色無地物、格子、縞物、襟や袖口などにデザインをこらしたタキシードも注目されており、リゾートウェディングやガーデンウェディング、アットホームな披露宴などで着用されます。
トラウザーズ
スラックスはアメリカ英語を語源にしていますが、トラウザーズはイギリス英語が語源です。スラックスが語源(ゆるい)の通り、ややゆったりしたズボンを指し、ゴルフなどのスポーツ向けズボンも広義に含んでいる一方、トラウザーズは基本的にカッチリしたフォーマル向けのズボンのみを指します。
ジャケットと揃いの生地が正式で、スラックスはジャケットの色に関わらず黒が基本です。
脇の縫い目にシルクの「側章(がわしょう、そくしょう)」というライン飾りが1本ついています。裾は、折り返しのないシングルが基本です。
サスペンダー(ブレイシズ)で留めるのが正式ですが、カマーバンド着用時にはベルトは付ける必要はありません。現代ではベルトの使用が一般的です。
ウェストコート(ベスト)
トラウザーズと同じくジャケットと揃いの生地のものを着用するのが正式です。
カマーベストやカマーバンドを用いる場合もあります。ベストの略式であるカマーバンドは、国際的に着用が義務付けられてきましたが、現在では省略可能なアイテムとして認められています。好みで選んで問題ありませんが、着用する場合はヒダを上向きに。
色やデザインが入ったものも間違いではないものの、格式を求める場ではやはり黒が正解です。
ダブルブレステッドの場合は省略することも可能です。
シャツ
衿先だけが小さく折り返されているウイングカラーと、一般的なレギュラーカラーを選びます。マナー的にはどちらでもOKですが、蝶ネクタイを締めることが多いので、基本は白無地のウイングカラーをセレクトしましょう。
白無地で胸にプリーツの飾りのついたタック・ブザムはタキシード上級者向け。また、フリルで装飾されたものはさらにおしゃれなコーデになります。
袖はシングルカフスが一般的ですが、ダブルカフスも可能です。胸元のボタンや袖は、スタッズボタンやカフリンクス等のアクセサリーを用いて統一感をだすこともできます。
ネクタイ
拝絹と揃いのシルク地の黒の蝶ネクタイ(ブラックタイ)が正式です。
黒以外の色・柄やクロスタイも合わせられるが、その場合はカマーベスト、カマーバンドと共地にするのが一般的なコーディネートです。
ポケットチーフ
白麻が基本ですが、上着が白やデザイン色の強い場合は、黒やほかの色の絹もので個性を出すコーティネートも可能です。
革靴と靴下
黒のエナメルの内羽根式のプレーントウ、またはオペラパンプスが一般的です。
靴下は黒ジャケットに合わせた黒無地の絹やナイロン製が多いのですが、近年ではさまざまな色のジャケットがデザインされているため、ジャケットの色に合わせた靴下を選ぶケースも増えています。
新郎のタキシードや衣裳に合わせる靴と靴下について解説。足元コーデ&マナーはこれで完璧!
帽子
タキシードには黒か濃紺のホンブルグ・ハット型、ただし夏はパナマハットを合わせることもできます。基本的に無帽でも差し支えはありません。
結婚式で新郎が着用するタキシードの主な色と与える印象
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結婚式の新郎衣装で人気の色。色ごとの意味や印象は?
結婚式で新郎の衣裳の色は、フロックコートなどある程度規定があるものもありますが、タキシードなど人気衣裳は新郎の好みやファッション性にあわせ、多様な色がある衣裳もあります。ここでは、新郎衣裳として選ばれる主な色とその見え方や意味を解説します。
【新郎衣裳の主な色】
「白」結婚式での王道カラー
「黒」格式では最上級の色
「ネイビー」上品で華やかな印象
「グレー」ナチュラル派で落ち着いた色味
「シルバー・ゴールド」特別な日の勝負色
「白」結婚式での王道カラー
白は結婚式の王道カラー。爽やかな印象なので、チャペルやバンケットといった一般的な会場だけでなく、リゾートウェディングやガーデンウエディングでも人気が高い色です。
純白のウエディングドレスを身に纏った花嫁とも相性抜群のため、統一感をもたせる前撮りのフォト撮影やフォトウェディングでもよく選ばれています。
真っ白には抵抗があるという人も多く、オフホワイトや襟などジャケットの一部が黒など色がついているバイカラーデザインや、パンツの色を変えて着こなすケースも多いでしょう。
「黒」格式では最上級の色
礼服の定番である黒は、どんなシチュエーションにも対応できる上、誰でも着こなしやすい色です。特にフォーマルな場では最も格式高い色とみなされるケースが多いため、格式の高い会場や、厳粛なムードが漂うクラシカルな式場に向いています。
固すぎる印象や地味で新郎らしさがなくなってしまう点を懸念する場合は、ネクタイやベストなどの小物で色味を加えるのもおすすめです。
「ネイビー」上品で華やかな印象
ネイビーは落ち着いた色という印象ですが、固くなりすぎず華やかさや爽やかさといった男の色気も感じさせる色として人気が高まっています。
品良くまとめたいなら濃いめの色味を、華やかさを出したいなら薄めの色味を選ぶと良いでしょう。
「グレー」ナチュラル派で落ち着いた色味
華やかすぎる衣装や堅苦しい衣裳が苦手な新郎に人気な色がグレーです。
光沢の少ないマットな生地なら、フォーマルウェアでもナチュラルに仕上がり、優しい印象になります。
ただ少しカジュアルな印象を与える可能性があるので、フォーマルな式よりも、ゲストとの距離が近いアットホームなウエディングや、披露宴のお色直しといった場に向いています。
「シルバー・ゴールド」特別な日の勝負色
結婚式などの晴れの日には、普段はあまり着る機会がない光沢のある色もよく選ばれています。華やかで存在感抜群なので、ボリュームのあるドレスを着る花嫁の横に立っても見劣りしません。挑戦しやすいのはシルバー、高級感を感じさせたいならゴールドがおすすめです。
タキシード以外の結婚式で新郎が着用する衣裳についてもチェック
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結婚式、特に結婚の誓いを立てる場である挙式はフォーマルな場であり、結婚式のホストであり主役である新郎新婦の衣裳は正礼装と決められています。現在、日本の一般的な結婚式で新郎の衣裳として選ばれるのは、タキシードを含め、和装洋装で主に5種類です。
また、正式なマナーでは、新郎の衣装も会場タイプや時間帯などによって着用するものも異なります。新郎の衣装にはタキシード以外にも、どんな種類があるかを確認しておきましょう。
新郎衣裳全般について詳しくはこちら
結婚式に着用する新郎衣裳の基礎知識。主な衣裳の種類、選び方、お色直し、費用相場もレンタルか購入か、試着まで解説
結婚式の新郎の和装は黒紋付羽織袴
黒紋付羽織袴は昼夜の結婚式問わず着用できる和装の正装です。
紋付袴は、羽織の背中・両胸元、両袖の5箇所に染め抜きの紋が入れられることから、正しくは「黒五つ紋付羽織袴」と呼ばれ、縦縞の袴を合わせる、日本の正式な新郎衣装です。小物は半襟から足袋、扇子、羽織紐、鼻緒まですべて白一色が正式になっています。
結婚式の新郎の昼の洋装…モーニング
昼間の時間帯で最も格式の高い、正礼装にあたるのが「モーニングコート」です。
昼から18時までの着用が正式とされています。
18世紀の英国貴族が朝の日課とした乗馬の後、そのまま宮廷に上がれるよう礼服化されたのがデザインのルーツであり、日本では皇室主催の園遊会や叙勲の授賞式に出席する人が着用していたり、ノーベル賞授与式で着用しているのはモーニングになります。
ジャケットとベストは黒の共地、前裾が斜めに丸くカットされたモーニングカットやカッタウェイカットと呼ばれる形で、衿は剣先のように尖ったピークドラペル。
前あわせはシングルブレストという生地を重ねない形で、ボタンはひとつ。
パンツは黒とグレーの縞模様でコールパンツと呼ばれるものを合わせるのが正式です。
結婚式では昼夜問わず、新郎新婦の父や親族も着用する定番衣裳になっているため、モーニングを選ぶときは、父親はじめ男性親族と衣裳がかぶらないよう選ぶケースが多いでしょう。
現在では、日本の婚礼シーンでの新郎が父親と差別化できるモーニングとしてデザイン性の高いものも増えてきました。
結婚式で昼・夜問わず着用できる洋装…フロックコート
フロックコートは19世紀中ごろから20世紀初頭に男性用の礼装として広く親しまれた服装で、伝統的な正礼装として、本来は昼の正礼装ですが、現在の日本では昼夜問わず着用することができます。
色は黒や白、グレーが一般的ですが、会場の雰囲気に合わせて光沢感のある素材のものや、新婦の衣装と合わせた華やかなカラーのネクタイやシャツでアレンジするのも人気のスタイルです。
モーニングコートに比べジャケットの前裾が水平にカットされた直線的なロングシルエットが特徴で、英国貴族の正装という丈が長く大きな身頃のデザインは、大聖堂での挙式やクラシカルな雰囲気の披露宴会場に映える非日常感たっぷりな衣装です。
結婚式の新郎の夜の洋装…燕尾服(テールコート)
18時以降の夜着用でもっとも格式高い正装とされるのが、燕尾服(テールコート)です。色は上下とも黒が正式で、ジャケットの前身頃が短く、後身頃がツバメの尾のように2つに分れて長くなっていることから燕尾服と呼ばれています。
黒いボウタイを結ぶタキシードの「ブラックタイ」と区別するために、白いボウタイ(蝶ネクタイ)が正式で、「ホワイトタイ」と呼ばれるドレスコードがあります。また、「ホワイトタイ」の際にはベストも必ず白が正式となります
馬服がデザインルーツで、現在も馬術の上級競技ではテールコートの着用が義務付けられているそうです。
燕尾服は公式の晩餐会などでしか着用する機会がないので、格式ある結婚式や、大人なムードのナイトウエディングの方など、着用できる機会としてぜひ活かしてください。
まとめ
結婚式の新郎が着るタキシードには歴史的背景と伝統にのっとった着こなしがある
タキシードとは、基本的には夜間、宴席で着用される男性用の礼服の一つです。女性のイブニングドレスやカクテルドレスに対応する服装です。
同じく夜間用の正礼服である燕尾服に対して略式の礼装とされていますが、現代では燕尾服の使用が減ったため、タキシードが実質的な正礼装の様に使われており、日本では正礼装として扱われるケースがほとんどです。
現在の日本では多様なタキシードデザインとコーディネート情報が錯綜していますが、まずは、正式なタキシードのデザインや着こなしの知識を知ったうえで、衣裳選びをすると、マナーにのっとったコーデになります。また、コーデアレンジもゲストから見て「きちんとタキシードについて知っているな」と一目おかれる組み合わせができるでしょう。