古式ゆかしい神前式とは
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「神前式(しんぜんしき)」とは、和装に身を包んで行われる日本古来の挙式スタイルのことをいいます。日本の宗教の一つである「神道」のしきたりにのっとって行われる結婚式で、祖先の神様達の前で結婚することを誓います。その際に玉串 を神様に奉納したり、三三九度の盃を酌み交わして家と家の絆を固く結ぶなどの儀式など、雅楽が演奏される中で、厳かな雰囲気で執り行います。
3大挙式に入るほど人気!
挙式には神前式以外にも様々なスタイルがあります。キリストの教えのもとチャペルで行われる「教会式」、特定の宗教を決めずに自由なスタイルで行われる「人前式」、古式ゆかしい「神前式」が最も主流で、3大挙式スタイルと言われています。
起源とブームになったきっかけ
神前式の始まりは、室町時代にまでさかのぼると言われています。「伊邪那岐(いざなぎ)」や「伊邪那美(いざなみ)」、「天照大神(あまてらすおおみかみ)」「大国主(おおくにぬし)」など、神様の名前が書かれた掛け軸をかかげて、様々なお供え物や神酒を捧げ、その前で夫婦の絆を結ぶために盃を交わしたとされています。公家や大名、武家だけでなく、一般民衆にも普及し、明治時代まで行われていた一般的な結婚式でした。ちなみに、神前式の最初のブームとなったのは、明治33年の「宮中賢所大前」で行われた大正天皇の結婚式が元になっていると言われています。人々は天皇陛下の神前式に魅了され、同じように神前式をしたいという希望者が増えたことにより、東京大神宮がそれを参考にし、現在のような神前式のスタイルを確立し、民間で行われるようになりました。
挙式はどこで執り行う?
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神前式は神様の前で結婚することを報告し誓い合う結婚式なので、日本の神様が祭ってある神社で行われるのが一般的で、多くの由緒ある神社で挙式を執り行えます。式を挙げる場所がどのような神様を祀っているかによってご利益が異なると言われているので、場所を選ぶ際は祀られている神様や土地柄を参考にすると良いでしょう。必ず神社で行わないといけないものではなく、今ではホテルや結婚式場に神殿が用意されていて、そこで神前挙式を行う新郎新婦も増えています。
ホテルや結婚式場で神前式を行う場合は?
ホテルや結婚式場にある神殿にて、神前式を行うことができます。祭られている神様やご利益など、特に強いこだわりがない方は神社以外の神殿で挙式を行うと良いです。式場によっては収容人数が制限されてしまうこともあるので、友人や知人などを招待したい場合は、収容人数が多い場所を選びましょう。
神前式はこんな2人におすすめ!
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神前式は以下のようなカップルにお勧めです。
日本の伝統と厳かな雰囲気を味わいたい!
神前式は、日本の伝統的な音楽である雅楽が演奏される中で行われます。また、玉串を奉納したり、三三九度の盃を酌み交わすなど、古くから行われてきた儀式を行うため、古式ゆかしい厳かな雰囲気で結婚式を挙げることができます。そのため、日本の伝統的な文化や仕来りを大切にしたいカップル、日本らしい奥ゆかしさを感じたいカップルにお勧めです。
日本ならではの和装を着たい!
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和装で結婚式がしたいというカップルこそ、神前式はお勧めです。花嫁の白いウェディングドレスも素敵ですが、白無垢に赤紅をさした姿はとても綺麗で神秘的に見え、日本人だからこそしっくりきます。また、振袖は凛とした雰囲気を作り出し、新郎の袴姿もとても神社に映えます。和装もウェディングドレスと同じくらい色鮮やかで柄が豊富なので、自分に合った衣装を見つけることができます。
家と家の結びつきを大切にしたい!
神前式は新郎新婦だけでなく、お互いの家と家、親族全員を家族として結びつけるという考えのもとで行われます。そのため、お互いの家族を大切にしたいカップルや、家族ぐるみでの付き合いを大切にしたいカップルにお勧めです。家と家を結びつけることを実感できるのは、神前式ならではの魅力です。
他の挙式スタイルにはない神前式の魅力
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日本の美しさが伝わる参進の儀
「花嫁行列」とも呼ばれる参進の儀は、神社で神前式を行う際に、神職と新郎新婦に続いて仲人、親族、友人が列を作って進んでいく儀式のことを言います。チャペルで結婚式を行う場合は、新郎新婦が入場する姿を参列者が見守るというのが一般的ですが、この参進の儀では参列者全員が参加するため、とても華やかです。また、参進の儀には参列者の足並みと気持ちを1つにするという意味があるので、参列者は新郎新婦と喜びを分かち合うことができ、感動的な瞬間となります。神前式を神社で挙げる際は社殿まで列を作って進んでいきますが、ホテルや式場の神殿ではこの儀式を行わないことが多いそうです。
日本の伝統や文化に触れることができる
神前式では日常生活では経験することができない、日本の伝統や文化に触れることができます。主に、三三九度の盃を交わす「三献の儀」や、玉串(紙垂(しで)や木綿(ゆう)をつけた榊(さかき)の枝)を神様に奉納する「玉串拝礼」、巫女が舞を奉納する「神楽奉納」など日本古来の凛とした美しい伝統に触れ、神聖な気持ちの中で式を挙げることができるのも神前式の魅力の一つです。
和装姿が映える
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神社や神殿の厳かな雰囲気に、和装姿がより美しく映え、白無垢に角隠し、真っ赤な赤紅は、普段とは少し違った神聖な雰囲気を演出することができます。和装は日本人の顔立ちにとてもよく合うので、花嫁の美しさを引き立ててくれます。
新郎に見せ場がある
教会式だとウェディングドレスを着た花嫁がどうしてもメインになってしまいがちですが、神前式では新郎にも見せ場があります。それは「誓詞奉読 (せいしほうどく)」と言う儀式で、このとき新郎は新婦と夫婦になるという誓いの言葉を読み上げます。誓詞奉読によって、夫婦になるという誓いを立てる場面は神前式の見所の一つだと言えるので、新郎にとって大きな見せ場となるでしょう。
式の流れと進行例をチェック!
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神前式の一般的な進行礼をご紹介します。
・参進の儀 / 入場神職と巫女、スタッフの先導によって入場します。新郎、新婦、仲人(媒酌人)、新郎両親、新婦両親、新郎側の親族、新婦側の親族の順に並び、神前に向かいます。神前にたどり着いたら、向かって右側に新郎側の親族、左側に新婦側の親族が座ります。
・斎主挨拶「斎主(いわいぬし)」とは、神事をつかさどる神主さんのこと。神様に今から挙式を始めるという挨拶を行います。斎主とともに、新郎新婦も含め列席者全員で神前に一礼をします。
・修祓の儀 (しゅうばつのぎ)修祓の儀では、式を行う前に身を清めるお祓いを行います。斎主が祓詞(はらえことば)を奏上し、幣帛(へいはく)を振り、一同頭を下げてお祓いを受けます。
・祝詞奏上(のりとそうじょう)斎主が神前に結婚を報告し、加護をお願いする儀式。新郎新婦の門出を祝う祝詞をあげ、参列者全員起立し、頭を下げて拝聴します。
・三献の儀 (さんこんのぎ)「三三九度」ともいう三献の儀は、大、中、小の三つに重ねられた盃を新郎新婦がお互いに交わし、夫婦になることを誓います。まず、一番上に乗っている小杯を新郎から新婦、次に真ん中にある中杯を新婦から新郎、最後に一番下にある大杯を新郎から新婦の順に、それぞれ三口で飲み干します。
・誓詞奉読 (せいしほうどく)新郎新婦は神前に向かって一礼をし、新郎が誓いの詞を読み上げ、挙式日と自分の氏名を名乗ります。新郎に続いて、新婦が氏名を読み上げます。終えたら、誓詞を折りたたみます。
・玉串奉奠(たまぐしほうてん)神様と人を繋ぐ玉串を巫女から渡され、新郎新婦はその玉串を天串案に添えます。玉串をささげた後は二回おじぎをし、二回柏手を打ち、もう一度おじきをする「二礼二拍手一礼」をします。
・指輪交換巫女が、新郎新婦の指輪を三宝に載せて運びます。新郎から新婦に、新婦から新郎に、指輪の交換を行います。
・親族盃の儀親族同士の絆を固めるために、参列者全員で神酒を飲みます。巫女が上座から順に盃に神酒を注ぎ、三献の儀(三三九度)と同様、三口で飲み干します。
・斎主一拝斎主が祝辞を述べ、神前に式を終えたことを報告します。斎主が一礼する際、それに合わせて一同礼。
・退場一礼をし、新郎新婦、仲人(媒酌人)、両親、親族の順で退場します。
新郎新婦が着る衣装とは
神前式の衣装や髪型に決まりはないので、洋装を着て式を挙げることもできますが、空間や雰囲気に合わせて、やはり和装を着て挙式に臨むことが多いようです。ここでは新郎新婦の和装の種類をご紹介します。
白無垢
「白無垢(しろむく)」とは、上下・裏表ともに白一色で仕立てられた和装のことを言います。花嫁が着る衣装の中でもっとも格式が高いものとされており、出産や葬礼などの衣装としても着られていました。白無垢に合わせる白い帽子を「綿帽子」といい、白無垢と綿帽子は、結婚式を挙げるときだけに許される組み合わせです。白一色で堅苦しいというイメージを持たれがちですが、柄の種類が多く、金糸や銀糸をあしらってあるものや、袖や襟元などに赤い布が織り交ぜてあるものなど上品でバリエーションも豊富なのでとても人気のある衣装となっています。
色打掛
「色打掛(いろうちかけ)」とは、様々な色を使った華やかな着物のことを言います。昔は白無垢で式を挙げ、披露宴やお色直しに色打掛を着ることが定着していましたが、白無垢と同じくらい格が高いものとされるようになり、挙式時にも色打掛を着る花嫁が増えてきています。色打掛の特徴は、何と言っても色合いや柄がとても鮮やかで豪華なので、写真映えが抜群です。そのため、フォトウェディングで着用する衣装としても選ばれることが多いそうです。また、柄やデザインの種類が多く、それに合わせて様々な髪型にアレンジすることができ、現代風に着こなすことができます。
引き振袖
「引き振袖(ひきふりそで)」とは、通常の振袖に比べて裾が長く、引きずるようにして着る着物のことを言います。そのなかでも黒を基調として織られた黒引き振袖は特に人気が高く、かつて武家に嫁ぐ際に着用する正式な婚礼衣装として着られていました。黒以外にも白や赤、青などを基調とした華やかな引き振袖もあるので、式は白無垢で挙げ、お色直しで引き振り袖を披露宴で着るという花嫁も多いそうです。着物と帯の組み合わせなどのコーディネートを楽しむことができるので、自分らしさを出したい花嫁や、色の掛け合わせを楽しみたいおしゃれな花嫁にとても人気があります。
五つ紋付羽織袴
様々な和装がある女性と違って、男性が神前式で着用する衣装は紋付袴だけとなります。羽織は黒の無地で、羽二重といって 縦糸と横糸 を交差させるように織られています。また、五つ紋付という名前の通り、背中・両胸・両袖の5カ所に紋が付いています。そして。小物はすべて白色で統一します。今では黒だけでなく、白の紋付袴などもあります。
おおよその費用相場はいくら?
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神前式を行う場合は、会場の規模によっても異なりますが、挙式の費用が「30万円?100万円」、衣装代「30万円~40万円」が相場となっています。他にも、雅楽や巫女の舞などはオプション料金がかかります。
挙式後に披露宴を行うカップル多数!
神社によっては披露宴会場が併設されているところもあります。神社によって披露宴会場の使用代が無料となることもあり、衣装、ブーケ、会場装花などの持ち込み料がかからない神社が増えているため、少しでも節約をしたい方やオリジナルの披露宴パーティーにしたい方にお勧めです。しかし、披露宴会場がないところもあるので、披露宴や食事会を開く際は近くの料亭やレストランなどをあらかじめ予約し、披露宴を行うと良いでしょう。また、ホテルや結婚式場は、神前式後そのままスムーズに披露宴を行えます。どちらの場合も神前式を終えた後に披露宴を行うカップルは多いようです。挙式+披露宴で平均「150万円~250万円」が相場となります。また、親族や近い身内だけで行う場合は、会食がついて「50万円」で行える神社や式場もあります。
まとめ
日本の伝統や厳かな雰囲気を味わえる神前式は家族と絆を深める挙式スタイル
神前式は儀式の内容や和装のイメージなどから、少し古くさくて堅苦しいと思われがちですが、最近では儀式を省いて簡略化したり、衣装は華やかなデザインなど種類が増え、神前式の人気が高くなりつつあります。花嫁の白無垢や色打掛、引き振袖は、ウェディングドレスにも負けないくらい美しく気品があり、雅楽や玉串奉納など日本ならではの伝統を堪能することができます。神前式は厳かな雰囲気の中で式を挙げることができるので、日本の伝統美を感じたいカップルや和装に憧れているカップルにぜひお勧めです。