結婚式で花嫁が着用する和装の種類と読み方
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結婚式で花嫁が着用する和装と聞くと、白無垢(しろむく)をイメージする人も多いのではないでしょうか。しかし、結婚式の花嫁衣裳には次のようなものがあります。
- 白無垢(しろむく)
- 打掛(うちかけ)
- 引き振袖(ひきふりそで)
- 新和装(しんわそう)
また、和装にあわせるヘアスタイルは次のとおりです。
- 綿帽子(わたぼうし)
- 角隠し(つのかくし)
- 文金高島田(ぶんきんたかしまだ)
- 洋髪スタイル
和装を着用して挙式を挙げる場合、挙式スタイルは神前式や仏前式、人前式などが選べます。
読み方がわかったところで、それぞれどのようなものなのか、和装、ヘアスタイルについて解説していきましょう。
和装にはステキな意味が込められている!和装の意味と特徴
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大きく4種類ある和装は、色やデザインだけでなく「格」が異なります。婚礼衣裳として最も格式高い和装が白無垢であり、新和装はドレス感覚で着ることができる新しい和装スタイル。
それぞれの特徴や意味を見ていきましょう。
白無垢(しろむく)とは?
白無垢(しろむく)は、和装で最も格式高い婚礼衣裳です。白い色には、「夫や嫁ぎ先の色に染まる」「嫁ぎ先の嫁として新たに誕生する」という意味が込められているのだとか。
一見真っ白でどれも同じように見えますが、実際は正絹(しょうけん・天然の絹)・交織(こうしょく・縦糸が絹、横糸が化学繊維)・化繊(かせん)と素材に違いがあります。また、緞子(どんす・表面がなめらかな生地)・錦織(にしきおり・刺繍のように模様を浮き上がらせた生地)など、折り方にも種類が。
松竹梅や鶴、鳳凰、桜や牡丹など、華やかで縁起の良い柄が織り込まれています。柄の意味を考えつつ、羽織ったときの印象で選んでみてください。
打掛(うちかけ)とは?
打掛(うちかけ)は、白無垢と同格の正礼装。もともとは、武家の花嫁衣裳でしたが、その美しさから一般にも広まっていったといわれています。「白打掛」ともいわれる白無垢も打掛の一種。結婚式で花嫁が着用する色・柄豊富な打掛は、「色打掛」といわれます。
白無垢よりも華やかで、引き振袖よりも重厚感のある色打掛は、選ぶのも楽しいもの。重さがあるので動きにくいですが、その分女性のかわいらしさが引き立ちます。
色打掛は、披露宴でのお色直しや前撮りなどで着用する人が多いようです。
引き振袖(ひきふりそで)とは?
引き振袖(ひきふりそで)は、おはしょり部分をあまりとらず、裾を引きずるように着つけられた振袖のことで、未婚女性の正礼装です。黒い引き振袖は「黒引き(くろひき)」といわれ、江戸時代から昭和初期にかけて最もオーソドックスな花嫁衣裳でした。
打掛よりも軽くて動きやすく、帯が見えるため豪華な飾り結びが楽しめます。
新和装(しんわそう)とは?
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新和装(しんわそう)とは、オーガンジーやチュールなど透ける素材でつくられた打掛のこと。ドレス感覚で和装を楽しむことができると注目を集めています。
洋髪スタイルにマッチしやすく、「和装の奥ゆかしい雰囲気もドレスの華やかさも捨てがたい!」という花嫁に人気です。
また、軽く風通しも良いため、夏の結婚式やマタニティウェディングなどにも良いでしょう。
和装にあわせるヘアスタイル
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和装を美しく引き立たせるには、ヘアスタイルも重要です。和装にあわせるヘアスタイルについて解説します。
綿帽子(わたぼうし)
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白無垢だけにあわせることができる綿帽子(わたぼうし)は、ウェディングドレスでいうところのベールにあたります。結婚式を終えるまで、新郎以外に花嫁の顔が見えないようにするためのアイテムで、うつむいたときに口元が見える姿が、花嫁を奥ゆかしく、美しく印象付けてくれます。
最近ではファッション的な意味合いもあり、綿帽子の下に洋髪スタイルをあわせ、ワイヤーで綿帽子の形をつくるという構造になっていることも。もともとは、文金高島田(ぶんきんたかしまだ)の上に綿帽子をかぶるのが一般的でした。
角隠し(つのかくし)
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白い帯状の布をおでこを隠すように文金高島田にまいたものを角隠し(つのかくし)といいます。「角(つの)を隠して夫や嫁ぎ先の家に従う」という意味があるといわれ、白無垢や打掛などにあわせるのが一般的。
華やかな簪(かんざし)をあわせて顔周りを明るくしつつ、花嫁の表情を美しくキリっと見せてくれます。
角隠しがセットされたカツラもありますが、頭やヘアスタイル、顔とのバランスを調整しながら角隠しのかたちを整えましょう。
文金高島田(ぶんきんたかしまだ)
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文金高島田(ぶんきんたかしまだ)は、日本で昔から結われてきた花嫁のヘアスタイルのひとつ。数ある日本髪の中で最も髷が高く、花嫁姿を華やかで美しく引き立ててくれます。
昔はすべて地毛で結われていましたが、最近ではカツラを選ぶ人も多く、全カツラと半カツラがあります。
- 全カツラ…文金高島田が結われたカツラをすっぽりかぶるスタイルです。髪の長さにかかわらず、文金高島田スタイルにすることができます。
- 半カツラ…顔周りは自分の髪で仕上げ、その他の部分をカツラにしたスタイルです。地毛を使用するので生え際が自然で、顔なじみが良いのが特徴です。
ちなみに、文金高島田を地毛ですべて結う場合は、肩甲骨から胸くらいの髪の長さがあれば大丈夫です。
地毛で結う洋髪スタイル
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花嫁衣裳は和装でも、ヘアスタイルは洋髪スタイルにする花嫁も増えています。
ふんわり柔らかい印象で和装を着こなすことができるのはもちろん、お色直しの時間も短縮できるためドレスも和装も着用したい花嫁におすすめ。
洋髪につまみ細工やピンポンマムのような生花をあわせれば、和の雰囲気をもちつつトレンドを感じさせる花嫁のヘアスタイルができるでしょう。
9割以上がレンタル!白無垢や打掛にかかる費用相場
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結婚式で着用する和装のレンタル率はウェディングドレスより高く、白無垢の場合93.8%となっています。
衣裳の種類 | 購入 | レンタル |
---|---|---|
白無垢 | 1.7% | 93.8% |
色打掛 | 1.7% | 91.7% |
ウェディングドレス | 11.8% | 85.9% |
カラードレス | 5.5% | 92.8% |
データ出展:ゼクシィ 結婚トレンド調査2019調べ
和装の中でも人気の高い、白無垢と打掛のレンタル費用相場について紹介します。
白無垢の場合
結婚式で白無垢を着用した人のレンタル費用は平均17.9万円です。ウェディングドレスのレンタル費用が平均 26.6万円ですから、10万円近く衣裳代をおさえられることになります。
とはいえ、白無垢の素材やブランドなどでレンタル費用に幅があり、割合は次のようになっています。
~10万円未満 | 10.6% |
10~15万円未満 | 26.6% |
15~20万円未満 | 19.4% |
20~25万円未満 | 18.9% |
25~30万円未満 | 11.9% |
30~35万円未満 | 7.4% |
35万円以上 | 5.2% |
データ出展:ゼクシィ 結婚トレンド調査2019調べ
そのため、白無垢のレンタル代は10~30万円ほどと幅広く考えておくと良いかもしれません。
打掛の場合
打掛のレンタル費用は平均26.9万円となっており、ウェディングドレスとそれほど変わりません。こちらも細かく割合を見てみると次のとおりです。
~10万円未満 | 8.3% |
10~15万円未満 | 11.5% |
15~20万円未満 | 10.5% |
20~25万円未満 | 15.5% |
25~30万円未満 | 8.8% |
30~35万円未満 | 16.0% |
35~40万円未満 | 8.2% |
40~45万円未満 | 9.9% |
45万円以上 | 11.2% |
データ出展:ゼクシィ 結婚トレンド調査2019調べ
白無垢よりもレンタル費用は上がる傾向がありますが、ボリュームゾーンは20~25万円未満と30~35万円未満に分かれます。そのため、打掛のレンタルには20~35万円ほどかかると考えておきましょう。
和装をステキに着こなす!トータルコーディネートを楽しみたい和装小物の種類
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白無垢も色打掛も、和装には小物がたくさんあります。着物にあわせて小物の色・柄を選ぶことで、オリジナリティのある和装コーディネートが完成します。和装をコーディネートする際の参考として、和装小物について解説します。
帯揚げ(おびあげ)
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帯揚げ(おびあげ)は、帯を結ぶ際、帯枕を包んで背中からまわし、帯の前上端に納めて飾る布のことです。「しょい揚げ」「せおい揚げ」と呼ぶこともあります。
白無垢や色打掛などを羽織ったときも、帯の上から見えるため装飾品としての意味合いも強く、色・柄は豊富。帯や帯締め(おびじめ)とコーディネートして選ぶと統一感が出てキレイにまとまります。
また、「子孫繁栄」「子宝」などの意味をもつ「鹿の子絞り(かのこしぼり)」で作られた帯揚げなどもあり、デザインだけでなく意味合いで選んでみるのも良いかもしれません。
帯締め(おびじめ)
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帯締め(おびじめ)は、帯を固定するために帯の上、中心近くに結ぶ紐のことです。
結婚式に限らず和装を着用する際に使用するものですが、婚礼の際は「丸ぐけ」という種類の帯締めを使用します。これは、布の中に綿をつめたボリュームのある帯締めで、「永遠に幸せが続くように」という意味が込められています。
打掛を羽織ると少し見える程度ではありますが、帯や帯揚げと色をあわせて選ぶと良いでしょう。
抱え帯(かかえおび)
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抱え帯(かかえおび)は、帯の下の方に結ぶ細い帯のことで、お引き摺りの長さを調節するもの。
もともとは、着物の長い裾を引きずって歩いていた上流階級の女性が、外に出る際に裾をたくし上げる際に使われていましたが、現代では婚礼のみに使用されます。
帯、帯揚げ・帯締めとコーディネートして選んでください。
ちなみに、抱え帯に似た「しごき」というひらひらした飾り帯がありますが、こちらは七五三のときに使用するものです。
筥迫(はこせこ)
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筥迫(はこせこ)は、刺繍や房が付いた箱状の装飾品のことで、今でいうメイクポーチのようなもの。武家の女性が懐紙や紅筆、白粉などを入れ、胸元のあわせにさして持ち歩く際に使われていました。
「いつまでも美しく、身だしなみに気をつけて」という意味が込められており、筥迫自体も華やかで美しいデザインのものが多いです。
白無垢にあわせて白いものを選んだり、金色でゴージャスに決めたり。色のついたものを差し色としておしゃれにコーディネートするなど、白無垢・打掛にあわせて楽しみましょう。
懐剣(かいけん)
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懐剣(かいけん)とは、懐に入れて持つ護身用の短刀のことで、懐剣袋に入れて帯の左側にさします。
明治時代以降、結婚式では装飾品としての役割を大きくもつようになりました。
「自分の身は自分で守る」「嫁いだら出戻らない」など、花嫁の覚悟が込められているともいわれ、花嫁のお守りとなっています。
筥迫(はこせこ)と色合いをあわせることで統一感を持たせるなど、懐剣袋の色柄によって和装の印象をガラッと変えることが可能です。
末広(すえひろ)
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末広(すえひろ)は、扇子(せんす)のことで、懐剣と一緒に帯にさします。婚礼用の末広は、開くと金と銀になっています。胸に刺したときに見える面や飾り房(タッセル)二種類があるため、着用する和装にあわせて選びましょう。
ちなみに、末広には「幸せと繁栄が末に広がりますように」という願いが込められています。
伊達衿(だてえり)
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伊達衿(だてえり)は、衿の部分に重ねて使用する細い布のこと。写真でいうと白い襟にあわせられた水玉模様の衿を指します。
もともと3枚重ねて着る習慣のあった花嫁衣裳の名残として、あたかも着物を重ねて着ているように見せるために用いられるため、「重ね衿(かさねえり)」と呼ばれることもあります。
伊達衿の色によって顔周りを華やかにすることも可能。打掛にあわせて色を選んだり、あえて異なる色を選んで差し色を入れてみたり、コーディネートの幅が広いのが特徴です。
半襟(はんえり)
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半襟(はんえり)は、着物の下に着る長襦袢(ながじゅばん)の衿の汚れを防ぐために縫い付ける細長い布(替え衿・かええり)のこと。
花嫁衣裳では装飾としての意味合いも強く、大きな刺繍やモチーフがほどこされているものも多いです。着物とのコーディネートや顔映りの良さ、刺繍の意味などを考慮しながら選びましょう。
掛下(かけした)
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掛下(かけした)とは、その名のとおり打掛の下に着る着物のこと。写真では青い着物を指します。
打掛などの色柄を引き立たせられるよう、白無地のものを選ぶのが基本ですが、最近では色・柄のついた色掛下(いろかけした)も豊富にデザインされています。
白無垢に色掛下をあわせれば、一味違った花嫁姿を印象付けられるでしょう。また、色打掛と同系色の掛下で統一感を持たせつつ小物で差し色を入れる、あえて打掛と反対色を選んで打掛も色掛下も引き立たせるなど、センスを発揮できる部分でもあります。
新郎は何を着る?結婚式の新郎和装について
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花嫁が和装を着用する際、新郎衣裳は何を選べばよいのでしょうか。新郎衣裳についてご紹介しましょう。
新郎が結婚式で着る和装の種類
新郎が結婚式で着用できる和装は「紋付羽織袴(もんつきはおりはかま)」です。中でも、新郎の和装で最も格が高いのが、黒い羽織の背中・両袖・両胸の5か所に家紋が入った「黒五つ紋付羽織袴」。
これよりカジュアルな和の装いとして、「色紋付羽織袴」もあります。こちらは白やグレー・青・紺・赤やピンクなど、羽織の色はさまざまです。
また、家紋の数は3つor1つで、家紋の数が少ないほど格は下がります。そのため、家紋が1つの色紋付羽織袴が最もカジュアルな新郎和装だといえるでしょう。
新郎和装の選び方
新郎が結婚式で着用する和装を選ぶ際は、花嫁の選んだ和装に格を合わせるようにしましょう。花嫁が最も格式高い白無垢を着用するなら、家紋が1つの色紋付羽織袴はふさわしくないということです。
ただし、比較的カジュアルな結婚式で、ファッションとして和装を選ぶカップルも増えており、白無垢に白い色紋付羽織袴をあわせたり、打掛にタキシードやスーツをあわせたりする場合もあります。
格式ある神社で伝統的な神前式を挙げるということでなければ、最近は和装も自由に選べるようになっていますので、衣裳店のスタッフに相談しながら、イメージに合わせて選んでみてください。
新郎が和装にあわせるヘアスタイル
結婚式で新郎が紋付羽織袴を着用する際、へアルタイルは地毛をセットするのが一般的です。中には、髪をそって髷を結う人もいますが、日常生活に支障をきたす可能性もありますので、そこまでこだわる必要はないのではないでしょうか。
また、カジュアルな結婚式ならば、紋付羽織袴にハットをあわせてみるのもオシャレ。新郎も、小物で遊びつつ和装を着こなしてみると良いでしょう。
紋服のレンタル費用相場
結婚式で紋付羽織袴をレンタルする際にかかる費用の平均は9.9万円です。タキシードのレンタル相場は12.9万円ですから、和装のほうがレンタル料は安い傾向があるといえます。
データ出展:ゼクシィ 結婚トレンド調査2019調べ
ただし、ほとんどの場合、紋付はタキシードのように自分で着ることができません。そのため、着付け代15000円程度に足袋などの小物代3000~4000円がプラスされ、タキシードをレンタルするより若干安いくらいの費用がかかると考えるとよいでしょう。
まとめ
楽しく選んで、和装をキレイに着こなそう!
結婚式で花嫁が着用する和装には、白無垢・打掛・引き振袖・新和装などの種類があり、ヘアスタイルも綿帽子・角隠し・文金高島田などがあります。和装にあわせる小物もたくさんあるため、アレンジ次第でコーディネートは無限大。
また、花嫁姿にあわせる新郎衣裳は紋付羽織袴が一般的ですが、最近ではタキシードやスーツをあわせる人も。
おふたりらしいコーディネートで、個性的で新しい結婚式の和装スタイルをつくり上げましょう。