これまでの大貫さんと山西さんの『夫婦のかたち』のお話はこちらから
【第1話】【第2話】【第3話】【第4話】【第5話】
子どもを産んでから大貫さんが気づいた『結婚式のもうひとつの意味』
息子との生活が教えてくれた『周囲への感謝』と『結婚式のかたち』
先輩の鬼奴さん・グランジ大さん夫婦の結婚パーティーに参加したことで、私の中での結婚式に対するイメージが、かなりポジティブなものに変わりました。二人の結婚式があまりにも自由で楽しいもの(※第5話参照)だったからです。
それまでずっと、結婚式は『私たちの夫婦のかたちにはあまり合わないもの』と感じていました。しかし鬼奴さん夫妻の結婚式を見て、自分たちらしさを前面に出した自由な形で開催しても良いのだと実感しました。
そした、今までは考えもしなかった「私がもしも式を挙げるならこんな風にしようかな…」という思いが、ふと頭をよぎるようになったのです。
(※)結婚式の定番演出である『ファーストバイト』や『花嫁の手紙』などの意味合いを深く考えると、大貫さんと夫山西さんの関係を表すには当てはまらず、大貫さんはずっと違和感を感じていた…(※第2話より)
息子が生まれてきたから見えてきた。自分らしい結婚式のかたち
…そんなふうに思いつつも、その後に『妊娠・出産・子育て』が怒涛のように訪れ、目まぐるしい日々が続きました。あまりの忙しさに「結婚式って挙げてみてもいいものかも!」という気持ちはスルスルと何処かへ行ってしまい、結婚式について考えていたことも忘れ去っていました。
しかし、日々成長をする息子と接しているうちに、突如「息子と一緒だったら結婚式ってすごく楽しそう!」という気持ちが生まれてきたのです。
時々テレビなどで、マタニティ婚やお子さま連れで再婚したなどの理由で結婚式を挙げていない方が『結婚して何年も経っているけど改めて式を挙げる特集』を見かけます。
そういうとき
「子供と一緒に挙げる結婚式って、とても楽しそう」
「結婚式に“これからも一緒に楽しく暮らしていこうね!”という気持ちが現れていて素敵!」
と思うようになりました。
子育てをしていると、今まで以上に家族のことを考え、感謝する瞬間が増えていきます。
その度に、この感謝の気持ちをいろいろな方に伝えたいという思いが強くなりました。
今まで私は、結婚式の準備の大変さや、招待させていただく方々の気持ちばかりを考えていました。
でもまずは自分が楽しむこと、そして『感謝の気持ちを表すために式を挙げる』という気持ちを、ずっと置き去りにしていたのだと気づいたのです。
隠し続けてきたもう一つの結婚式を挙げたくない理由
実はこの連載でも話していなかった、結婚式を挙げたくない理由がもうひとつあります。
それは、『身内の前で泣きたくない』という理由です。
私はこれまで、人前ではあまり泣かないようにしてきました。特に家族や近しい人の前で泣くのはとても恥ずかしく感じてしまいます。そのため、誰かの結婚式に参加する時は泣くのを我慢するために、式の間中ずっと太ももをつねって過ごしてきました。ところが年齢を重ねると、確実に涙もろくなるのです。
実は自身の結婚前に、友人づてで結婚式の司会を頼まれたことがありました。新郎新婦と私はまったく面識がなく、お会いしたのは式の当日。初対面にもかかわらず、式で感動してしまい、ついには式の途中で涙が堪えられなくなってしまったのです。
司会としてパーティを進行するために、喋らないといけない。なのに涙で言葉が出ない。
突然無音になった会場に、周囲がざわつき始めました。ゲストの皆さんに司会が号泣しているのに気付かれ、またざわつき…大変な事態となりました。
今日会ったばかりの方々の式でこうなってしまうのです。自分が結婚式を挙げたら一体どうなってしまうのだろう…もう不安しかありません。
『絶対に涙を見せたくない』という思いから、結婚式を挙げることに拒否反応を示していた部分もあったのです。
結婚式の固定観念がなくなったら。もっと結婚式が楽しくなる
でも今の私にとって、自分が泣いてしまうことを恥ずかしいと思う気持ちより、いろいろな方に感謝したいという気持ちの方が、ずっと大きくなっています。
子育てを通して、いつの間にか自分も一緒に成長できていたのかもしれません。さまざまな経験から『結婚式はこういうもの』という固定観念が、現在ではなくなってきています。
例えば、結婚式を挙げる時期。
その人その人によって「結婚式を挙げたい」と思う時期は様々でいいのかもしれない、と思えるようになりました。
結婚したらすぐに挙げたい人、仕事のペースが落ち着いたら挙げたい人、出産して落ち着いたらあげたい人…。自分の中で挙げたいという気持ちが生まれた、その時が『結婚式を挙げるベストタイミング』なのかもしれません。
今後、もしも私が結婚式を挙げることがあったとしたら。
自分たちが一番に楽しみ、周りの方々にも楽しんでいただきながら、やりたいことをふんだんに盛り込んだ感謝でいっぱいの式にしたいです。
誰もが成長し大人になることに気づいて『結婚式』から自由になった
── 大貫さんが結婚式への考え方が変わった大きな理由に、お子さんを出産されてからの気持ちの変化を挙げています。どんな部分でご自分の気持ちの変化に気づいたのでしょうか。
大貫さん:よく出産後の意識の変化として『子どもが生まれたら親の苦労が分かる』ことが挙げられます。私も先輩ママ達から聞かされていました。
でも、私が出産後の考え方で特に大きく変わったと感じたのは、私自身の『人に対する見方や接し方』でした。
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例えば若いころ、友達や仕事上で知り合った方に対して「どうしてそんな言い方や態度をとるのだろう?」と感じてしまう場面があります。そういう時は、なるべく表情や態度に出さずに冷静に対応する努力をしたり、その人との関わりを避けるようにしていました。
ところが、出産と子育てを経験すると、今まで苦手だったタイプの人の性質や言動も、大人として成長したからこその『人間らしさ』だと感じられるようになり、すんなり受け入れにれられるようになったんです。
── 大貫さんにとって苦手だった人の『人間らしさ』とは、具体的にどのような部分で感じることができたんですか?
大貫さん:他人にから毒づかれたり、マイナスの感情をぶつけられるようなことがあっても、
「この人にも昔は食べ物をむせちゃったり、おむつを変えてもらったりしていた頃もあったんだよね」
「いろんな人の力で育ってきたお陰で、今はこんなにしっかりした嫌味を言えるぐらい、立派な大人に成長したんだなあ」
と、なぜかその人の親か親戚のような立ち位置で見て、接することができるようになったんです。
オジサンがワンカップを買ってすぐ開けながら店から出ていくのを見て「よくぞ、酒を即座に飲むようになるほどに成長して…」とじんわり感じることもあります。
今では人にはそれぞれ成長という名の人生がある、ということに関心が行くようになり、苦手だと感じる人がいなくなりました。
── すべての人へのお母さん視点…ですね!とてつもなく優しく、温かい視点だと思います。
大貫さん:もちろん、子育てを経験しなくても元からそういう目線で感じられる人も、私の周囲にはたくさんいました。ただ、私は未熟者なので、子育てを経て得られた部分が大きかったです。
私は若いころ、自分の感情を出さずに波風を立てず、丸くおさめようと気を張っているタイプでしたから。
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── 大貫さんが若いころ、常に俯瞰(ふかん)の立場からの視線を得ることで落ち込みも笑いや面白さに変えていったとおっしゃっていましたね(※第1話参照)。
大貫さん:俯瞰(ふかん)から人間関係を見て物事を冷静に捉えることで、ストレスを直接浴びずに避けるという自己防衛の意味もあったと思います。
過去にコンビを組んでいた相方に「大貫さんは第一印象の天才。どんなに嫌な人に会ってもその感情を全く見せない」と驚かれたことがあります。でも他人の気持ちを常に気にして「誰かを傷つけないように」と、考えすぎてしまうことも多かったんです。
妊娠と出産で『愛されていること』を感じ『他人を信頼すること』ができた
大貫さん:実は妊娠が分かった時、周囲に報告することをとても迷っていたんです。
妊娠報告とは周囲からどのような目で見られているのか。報告された人はどう感じるのか。人によっては傷つく人もいるんじゃないか…人の視線を気にして、考え過ぎてしまいました。「そんなことは出産してからで十分だろう」と感じている人がいるかも、自分の真意が伝わるだろうかと、完全に疑心暗鬼です。
しかし私たちの仕事は、ドッキリ企画や身体を張ったロケが入ることがあります。自分の知らないところで、お腹の子に万が一のことがあるような企画が進んでいる恐れもありました。それで仕事を調整してもらうよう、まずマネージャーや仕事の関係者に妊娠報告を行いました。
いざ報告してみると、周囲はびっくりするほど喜んで、心から祝福してくれたんです。心配していた自分がバカだったと後悔しました。
それまでは、芸人として人を笑わせるためにどうしても客観的なポジションから自虐ネタや自分を落としたネタをふることが多いので、自分の幸せを周囲に伝えることに躊躇していました。また自分に向けられる愛情を「そんなにうぬぼれてはいけない」とも思っていました。でも妊娠と出産の期間は、本当に周囲からの愛を実感することができたんです。
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だから、出産して子育てを経験した後では『人と仲良くすること』を頑張りすぎず、肩の力を抜いて自然にできるようになりました。相手も自分と同じように成長したのだと分かって「こんなことぐらいではこの人は自分のことは嫌うような人ではない、嫌ったりしない」と信頼できるようになったからだと思います。
── 大貫さんが結婚式に対する概念が大きく変わった理由が、今のお話を聞いてとてもよく分かるような気がします。他の人を信じることで結婚式への捉え方が自由になって、自然と楽になったとも言えるのでしょうか。
大貫さん:そうかもしれません。
以前は自分が頑張らないと、誰かから嫌われてしまうと思っていました。今はそんなに嫌な人ばかりじゃないと自然に思えます。
人間そのものを、すべて信頼できるようになったのかもしれません。
結婚式を迷うプレ花嫁さんへ。同じように悩んだ大貫さんが伝えたいこと
── いま、結婚式をする、しないで迷われている方へ、結婚式で大いに悩んだ先輩として大貫さんから伝えたいことはあるでしょうか。
大貫さん:私が結婚した頃と比べると、現在は『結婚式をする、しない』の選択肢の形がとても増えていますよね。また結婚式をしないという選択をしても、周囲から何か言われるようなリスクは確実に減っていると思います。
ただ、もし『結婚式をしない』選択肢をしたとしても、結婚の思い出を何らかの形には残しすことは考えてみてほしいです。
ものすごく簡単な形式でもいいんです。フォトウェディング、家族だけの食事会、友人とのパーティのみ、二人きりの挙式…結婚式よりもシンプルでカジュアルな結婚の形が、今はたくさん選ぶことができますから。
── 大貫さんご自身は、仕事で行ったフォトウェディングについて、現在はどのように考えていらっしゃいますか?
大貫さん:私は最初「結婚式はやりたくない」「写真も別に撮らなくていい」と、結婚を思い出に残すことすら考えていなかったです。
でも仕事だからと偶然にもフォトウェディングを行ったことは、心からよかったと思っています。
結婚した当時のことを鮮やかに思い出すことができる、大切な写真を残すことができました。何より子どもが生まれてから気づいたのですが、息子に私たち夫婦の思い出を、写真を見せて話せる機会を得ることができました。
── 結婚の始まりの幸せな思い出を何らかの形で残すことは、その後の生活においても大切なことなんですね。
大貫さん:今はフォーマルな結婚式からカジュアルな結婚イベントまで、あらゆる『結婚式のスタイル』の選択肢があります。やりたくないことは省いてもいいんです。これだけ選択肢があるのだから、本当に自分が希望する形の結婚式を、想いのままに実現してもいいはずです。
自分がやりたいことだけを実現できる結婚式をよく考えて選択すれば、「結婚式ってどうしてやるの?」「結婚式の準備が大変そう」という気持ちから抜け出すことができるでしょう。そしてきっと、結婚式を自由に、思い切り楽しめると思います。
いま大貫さんが結婚式をするならどんな結婚式をする?
── 大貫さんご自身も、思い切っていまから結婚式を計画するというのはいかがでしょうか?
大貫さん:そうですね…(笑)
ただ、ファーストバイトや両親への手紙など、無理やり感動へ持っていくのは、まだまだ抵抗があります。あと、人前で泣いてしまうのも未だに恥ずかしいという気持ちがあるんです。
── 漫画でも出てきた司会で号泣したエピソード(※漫画参照)は、芸人としての大貫さんのイメージからは意外でした。
大貫さん:実は涙もろいんです。他の人とは、感動系や動物系のドラマや映画は絶対に見ません。1人で見てひっそり泣きます。仕事で感動系のVTRを見ることがあったときも、太ももを見えないようにつねって絶対に泣かないようにしていました。
だから結婚式の司会で泣いてしまった時は、ものすごく焦りましたね。花嫁さんが読む『両親への手紙』を聞いていたら、彼女の人柄の良さが自然と分かるんです。そしてご両親に本心から感謝の気持ちを伝えたいという気持ちも理解できました。すべてがグッときてしまい、周囲の視線に焦りながらも号泣してしまいました。
── もし自身の結婚式をして手紙を読んだら、泣いてしまう大貫さんが想像できます(笑)。手紙は読まないとしても、結婚式では他にどんなこと計画してみたいでしょうか?
大貫さん:息子と夫、そして私が一番に楽しめるような結婚パーティがいいですね。普通の結婚式の形式やスタイルにはとらわれず、自分が楽しい、子どもたちやみんなを楽しませたいと思うアイデアを詰め込んだパーティにしたいんです。
自分の友達に子どもがいる人が多く息子のお友達も招待したいので、会場の真ん中を子どもたちがわいわい遊べるキッズスペースにしたいですね。周囲に椅子をたくさん並べて、自由に座ったり遊べるような空間を作りたいです。会場内はテーマパークのような、子どもたちが目で見てワクワクして楽しめるような空間装飾ができたらなあと思います。
結婚式で子どもが泣いてしまうと、慌てて会場の外へ連れ出すお母さんたちの姿をたくさん見てきました。だから子どもたちをゲストと私たち夫婦の大人全員で見守って、誰も外にでることなく楽しめる式にしたいんです。
── 小さいお子さんを中心に考える結婚式のアイデア、とても素敵ですね。子ども連れでの結婚式の参加を躊躇してしまう方も、参加がとても楽しみになるアイデアのはずです。
大貫さん:そのほかには、ヒーローショーも呼びたいけど高いかもしれないので、仲の良い芸人さんたちにヒーローを演じてもらうのもいいかもしれません。そして余興で、持ちネタを披露してもらうこともお願いしたいですね。
それから、自分たちの出会いから結婚までを思いっきり美化した、少女漫画のようなキラキラのキャラクターで描いて漫画にしたいという野望もあります。
あ…これでは準備時間がいくらあっても足りないぐらいですね(笑)。
── お話を聞いただけでワクワクします!大貫さんらしい思いやりにあふれた、素敵な式になりそうですね。そして近い未来にぜひ実現させてほしいです。連載を通じて大貫さんには『結婚式をやりたくない』気持ちにひとつひとつ真剣に向き合っていただき、素敵な結論を出していただくところまでたどりきました。そしてお話を聞かせていただいた私自身が『結婚式の意味』を考えるきっかけにもなりました。いつかまた、大貫さんが体験してきた素敵な結婚のお話を、別の機会に聞かせていただきたいです。最終回まで本当にありがとうございました。
芸人&漫画家&お母さんの3つの顔!大貫ミキエさんとは
芸人として旦那様である山西章博さんとコンビ『夫婦のじかん』として活動中。
また漫画家としては集英社ちびまる子ちゃんファンコミック大賞、ママリ漫画大賞、小学館漫画賞、たまひよ漫画賞等々数々の漫画賞を受賞。
大貫さんの活動や著書を、今すぐCHECK!
【お知らせ】大貫ミキエさん著書『母ハハハ!』発売中
付き合って10年で結婚、偶然が重なり夫婦でお笑いコンビを組むことに!
嫁でイラストレーター兼芸人の「夫婦のじかん 大貫さん」が、旦那の山西章博(元・トンファー)とのふたり暮らしの様子から、結婚やコンビ結成のエピソード、妊娠・出産・育児の中で日々巻き起こる、笑いと癒しと奮闘の数々をユーモアたっぷりに綴った抱腹絶倒のコミックエッセイ
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