手土産の「熨斗(のし)」とは
手土産を渡す際に、伝統的な日本のマナーとも言える「熨斗(のし)」。
本来のしとは、「のしあわび」の略。古くは儀式用の肴に使用していた、アワビの肉を薄くはぎ長く伸ばして干したものが語源で「のしあわび」を祝儀の贈り物に添えるという風習から由来し、現代では紙で印刷したものを代用するようになりました。
また、のしには「水引」と呼ばれる紙でできた紐をつけますが、こちらものし紙に水引が印刷されているものが一般的になってきています。
「のし」は、お祝いごとやビジネスシーンの席など幅広いシーンで持参する手土産や贈答品に利用し、贈り物をする相手に対してより丁寧な気持ちを表すためのツールです。
顔合わせに持参する手土産に「熨斗(のし)」は必要か不要か
食事会の手土産の「熨斗(のし)」について考える際には、顔合わせ食事会がどのような席と両家両親が考えているのかの確認を取りましょう。
顔合わせ食事会の趣旨を両家両親に確認
顔合わせ食事会に対して、両家の両親がどのように考えているのか、まずは足並みを揃えて確認をとる必要があります。
結納のように両家の結びつきをより深めるためのフォーマルな儀式的な位置づけで捉えているのか、より親睦を深めるためにカジュアルなものと捉えているのか、各家庭、各両親によって考え方が変わるところです。
手土産にのしが必要な場合
結納の後に行う、両家が一同に会し、きちんと挨拶をするような、フォーマルな席での顔合わせ食事会では、のしは必要と言えます。
手土産にのしは必要ない場合
より両家の親睦を深めるために、かたくるしいことはなくカジュアルな席で食事を楽しむ顔合わせが、現在では増えています。
そのため、持参する手土産にものしをつけないケースが増加しており、お互い気を使わせないよう、手土産はなしにするなどといったケースも増えているようです。
結納なしで両家の親睦を深めるための顔合わせ食事会であれば、のしをつけると丁寧すぎるとみる向きもあり、きちんと包装紙がかけられていれば十分という考え方もあります。
顔合わせの手土産にのしが必要か、必要ないかは両家足並みを揃える
顔合わせ食事会の場は、両家がスムーズに親睦が深められる両家の足並みを揃える必要があります。ど片方の家が丁寧な手土産を用意してきたが、片方の家には何も用意がなく気まづい思いをするようなシーンは、できるだけ避けたいものです。
両家がどのような顔合わせ食事会を想定しているのか、両親にきちんとヒアリングした上で、二人が話し合い足並みを揃えた上で、手土産ののしをどうするかについても配慮しましょう。
迷う場合は、両親に相談するか、手土産を購入する際に百貨店や老舗の和菓子屋などに聞くなどして、信頼がおける店舗のカスタマーサービスに相談をするのも一案です。
顔合わせ食事会の手土産につける「熨斗(のし)」の水引
顔合わせ食事会の手土産にのしをつける場合は、水引の種類に注意しましょう。
一般的に、顔合わせの手土産につけるのしの水引の図柄は「紅白結びきり」を使います。
訪問などに使用する蝶結びの図柄とは違います。のしの水引の図柄には由来と意味がありますので、その意図を間違えないようにしましょう。
「結びきり」の水引の図柄の熨斗(のし)を一般的には使用する
水引の図柄は「紅白結びきり」のものを選んでつけましょう。
「結びきり」と一般的な贈答品に使用する「蝶結び」との違いは、水引が簡単にほどけないようになっている形であることです。
簡単にほどけない結び方であることで「一生に一度きりの縁であってほしい」という縁起と願いが込められているので、顔合わせを始め結婚関連のお祝いには、紅白結びきりを選ぶのが正解です。
紅白、10本の「紅白結びきり」の水引を選ぶ
色はお祝いを表す紅白のものを。
結びきりは、水引が5本・7本・10本のものがあります。結婚関係のお祝い事には「かたく結びついて離れない」という願いを込めて10本の水引ののしが使われるのが一般的。
ですが、顔合わせはまだ結婚前に行います。手土産に使うのしは、水引が5本・7本のものを使っても問題はありません。
慣習の地域差に注意を
地域や家によっては訪問の手土産に一般的な「蝶結び」を使う考え方もあるようです。
両親や地域の風習に詳しい方に聞いてみた方が安心です。
また迷った場合は手土産を購入する際に、その地域の百貨店や老舗の和菓子屋などで手土産を購入し、聞くなどして、信頼がおける店舗のカスタマーサービスに相談することもできます。
顔合わせ食事会の手土産の「外のし」「内のし」の付け方
品物をおおう包装紙の外側にのしをかけることを「外のし」、包装紙の内側にかけることを「内のし」といいます。送る方法と贈る意図によって使い分けをします。
外のし
贈り物であることを強調したい場合や自ら持参して手渡す場合には、包装紙の外側にのしをかけます顔合わせのご挨拶として持参する手土産は、外のしが一般的です。
内のし
控え目に送りたい場合や、配送で贈答品を送る場合は、包装紙で包む前にのしをかけます。手土産に選んだものが包装紙がかけられないような形状のものだった場合は、直接品物にのしをかけ、風呂敷に包んで持参します。
顔合わせの手土産の「熨斗(のし)」、表書きの書き方
のしの中央にかけられる水引を境に、上部を上段・下部を下段とします。
上段にはお祝いの種類を、下段には贈る側の名前を書きます。
表書きの上段は「ご挨拶」か「寿」を書き、下段に名前を書きます。
濃い色の墨を使用し、毛筆で書く
お祝い事での表書きは濃い色の墨を使って毛筆ではっきり書きます。
自分で書く字や毛筆に自信がない場合は、店舗で購入した際にのしをかけてもらうようお願いし、一緒に表書きも依頼しましょう。百貨店等での購入であれば、カスタマーサービスカウンターなどでも依頼できます。
表書きは毛筆書体で印刷したものでも、特に問題はありません。
のしの上段には「ご挨拶」または「寿」の表書きを
表書きを書く際には、「ご挨拶」または「寿」と書くケースがあります。
はじめてお会いする場合、既に結婚のお許しを頂いている場合と場合によって顔合わせ手土産にお付けする熨斗の表書きが異なります。
「ご挨拶」の場合
両家の親睦を深めるための、アットホームな顔合わせ食事会の場合の表書きは「ご挨拶」で。単に両家揃って食事をするだけ、または記念品交換程度のラフなものであれば、ご挨拶の表書きがいいでしょう。
両家両親が顔合わせで完全に初めて会うような場合などは、「ご挨拶」が適当です。
「寿」の場合
顔合わせ食事会の段階で、既に結婚式の日取りまで決まっている、または、結納も兼ねたフォーマルな顔合わせ食事会の場で手土産を渡す場合は、表書きは「寿」でが適切です。
のしの下段には家の名前(姓のみ)を
顔合わせでは家を代表し、手土産をひとつ贈ることがほとんどなので、「鈴木」「田中」など、苗字のみを書きます。
手土産の用意は一家で1つで十分です。他の兄弟や親族まで用意する必要はありません。また、兄弟が結婚して家を離れている場合でも、兄弟まで用意する必要は基本的にはありません。
まとめ
顔合わせ食事会で手土産で、のしについて必要か必要ないか、迷った場合の考え方の基本は「両家の足並みを揃える」ことが大切です。
食事会の主旨が、フォーマル寄りかカジュアルかで、のしをつけるかどうか、また両家両親がどう考えているかで判断しましょう。もちろんのしがついていたほうがより丁寧な印象、ととらえる人もいます。
のしにはお祝い事への縁起や願いが込められています。シーンや意図に応じてきちんと使えれば、贈り主の心を伝えることができます。お祝いや訪問の意味合いに応じて理解しておきましょう。